「ポリアモリー」複数の相手と恋愛関係をもつ恋愛の概念とは?
ケーキであれば、「苺ショートも好きだけどチョコレートケーキも好き」ということは大いにありえます。では、ケーキではなく男性に対してはどうでしょう?A君も好きだけどB君も好き…そんなことが起こり得るのでしょうか?
ラブコスメが女性を対象に実施したアンケート調査「一度に複数の男性のことを好きになった経験がありますか?」では42.8%が「はい」と回答しました。
出典:ラブコスメ
お寄せ頂いたコメントを、一部抜粋してご紹介しましょう。
一般的にはまだ知られていないかもしれませんが、複数恋愛という関係性は「ポリアモリー」として成立しています。この記事では、「愛のカタチ」の1つとして、ポリアモリーが何たるかを解説します。
ポリアモリーの定義、複数恋愛のスタイルとは?
Polyを日本語訳すると「多くの」、そしてamolはご存知の通り「愛」。つまりポリアモリーとは、多くの愛情関係を指します。
多くの愛情関係と言っても、ただやみくもに不特定多数のパートナーと関わるわけではありません。ポリアモリーには確かに、特定の人物に対する「愛情」があります。ゆえに、セックスフレンドだとか、ましてやワンナイトラブとは全くの別物!
しかし、そこに「確かな愛情」があるとはいえ、パートナーがパートナーの愛情を独占したいと願えば、複数恋愛の形は成立しません。
つまりポリアモリーは、パートナー同士の同意が必須条件となります。パートナーの複数恋愛に同意する、つまり、パートナーを束縛しない恋愛観を持った者同士でなければならないのです。
多くの男女は、パートナーに対して「自分だけを見ていてほしい」と願う傾向が強いため、ポリアモリーは少数派です。しかし、日本にもSNSなどを通してポリアモリーをカミングアウトしている人は存在します。
ここまで読んで、「もしかすると自分はポリアモリーかも」とか、恋人や友人に対して「○○君(もしくは△△ちゃん)はポリアモリーかも」と感じた人もいるでしょう。
では、もう少しだけポリアモリーとは何たるかを掘り下げていきたいと思います。セックスフレンドやワンナイトラブとの違いはご理解いただけたはず。では、浮気や不倫とは何が違うのでしょうか?
ポリアモリーは浮気や不倫と何が違うの?
先にも述べたとおり、ポリアモリーはパートナー同士の同意が絶対条件です。むしろ、パートナー同士という枠を飛び越え、複数恋愛の構図に関わる全ての登場人物に同意が必要です。
例を挙げましょう。A子さんという女性が、B君・C君それぞれと恋愛関係にある場合。B君だけC君との関係性を知っていて、C君はB君との関係性を知らないようでは、ポリアモリーとは呼べません。B君もC君との関係性を理解しており、C君もB君との関係性を理解して初めて、ポリアモリーは成立するのです。
いわゆる浮気や不倫は、パートナーに対して秘密裏に行ないますよね。ポリアモリーに関しては、隠し事は厳禁!複数恋愛はオープンに行なわれます。
また、本命だの2番手だのと、「順位」をつけないことも特徴と言えるでしょう。
浮気や不倫だと、「本命はB君で、C君は遊び相手」など、順位が存在するものです。しかしポリアモリーの場合は、B君もC君も、同率1位なのです。冒頭で触れた、ケーキと似た感覚かもしれませんね。
苺ショートかチョコレートケーキか、順位をつけろと言われても、どっちも好きとしか答えられないこともあるでしょう。これこそが、浮気や不倫との明確な違いだと言えるでしょう。
ポリアモリーであることのつらさ
ポリアモリーであることには、主に3つのつらさが考えられます。「自分」「相手」「周囲」です。
(1)自分自身に対するつらさ
まずは自分自身に関して。インターネットで性愛に関する情報が得られる時代とはいえ、ポリアモリーを知らない人はまだ多いです。そのため、自分自身がポリアモリーと気づくことができない人もいるでしょう。
すると、B君もC君も同じくらい好きで、どちらか選べない自分は変なのではないか…と、自身を責めることになりかねません。
(2)相手に対してのつらさ
幸い、ポリアモリーという愛の形を知ることができたとしても、次に立ちはだかるのは「相手の同意」です。相手から、1対1の関係性を懇願される場合もあるでしょう。
また、「他に好きな人がいるのは仕方ないにしても、いっそのこと言わないでほしかった」と、知らぬが仏を希望されることもあります。
もしくは、片方の同意は得られても、もう一方の同意が得られない場合もあるでしょう。また、どうしても複数恋愛を求めるならと、別れを宣告されることも、想像に難くありません。
(3)周囲に対してのつらさ
相手の同意を得られ、晴れて複数恋愛成立となっても、第三者が理解するとは限りません。友人知人から、奇異の目で見られる覚悟も必要です。
以上を踏まえると、ポリアモリーには突破しなければならない、さまざまな困難や課題があると言えるでしょう。
ポリアモリーは「性愛の多様性」の一種?
現代は、「多様性」の時代と言われています。進学にせよ職業にせよ趣味娯楽にせよ、そして性愛においても、多様性が浸透しつつあります。LGBTやジェンダーレスなど、従来の枠組みを超越した「性のあり方」が登場してきたことが、その証しです。
無論、世間全体の理解が得られるには、今後克服していかなければならない壁はまだ多々あります。
ポリアモリーも今後、これも愛の形の1つだとして、まずは私たち現代人が「知る」ところから始めるべきテーマなのだと思います。
知った上で、賛成であるとか反対であるとか、そこに個人の価値観が入るのは自然なこと。ただし、ポリアモリーが何たるかをよく知らない状態で批判するのは、多様性の時代を生きる現代人として、あまりにも視野が狭いと、筆者は思うのです。
仮に、自分自身の価値観にはそぐわないとしても!「自分とは違う価値観の人間も存在する」と、認識できる現代人でありたいものです。
日本は単一民族国家なので、自分と違う誰かを認識することに、「慣れ」がないだけ。国際化も進みつつある訳ですし、「みんな違って当たり前」を受け入れていく方向性に、少しずつ順応していきましょう。
- ライター:菊池美佳子さんプロフィール
- 1977年3月17日生まれ。20代の頃に様々なナイトワークを経験、男女の性愛について身をもって学ぶ。 引退後はコラムニストに転身。